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秋田芸能アーカイブスについて

ごあいさつ
秋田県には、国内最多である16の重要無形民俗文化財が存在し、集落単位でも多様な民俗芸能が存在しており、昭和と平成の二度の市町村合併後も、変わらずにそれらの多くが継承されてきました。しかし、その多くは一般的に知られていない上に、全国で最も高い高齢化率、そして人口減少率と呼応するように継承が困難といった危機に直面しています。
そこで、国際教養大学 地域環境研究センターでは、平成22年7月に文化庁から地域伝統文化総合活性化事業の採択を受け、秋田県における民俗芸能の実態調査に乗り出しました。具体的には、民間における歌舞音曲で、江戸末期以前に始まったとされる民俗芸能を対象に、関連する文献収集と聞取りによる民俗芸能保存会の実態調査、民俗芸能が披露される現場での写真・映像撮影をおこないました。そして、県内全域の民俗芸能に関するサイト「秋田民俗芸能アーカイブス」を立ち上げて情報を掲載するとともに、DVDの作成と配布を通して記録の公開を3ヵ年にわたり行ってきました。
本サイトでは、300件以上の秋田県内の民俗芸能が登録されており、各ページにおいて2分間のダイジェスト版映像と関連情報をご覧いただけます。また、各民俗芸能の映像は完全版としてDVDにし、調査対象地域の教育委員会、小中学校、図書館やご協力いただいた民俗芸能保存会等に配布しています。
本サイトを通じて、地元の方々そしてこのサイトをご覧の皆様が少しでも民俗芸能に興味を持っていただき、秋田の民俗芸能のすばらしさや継承の重要性などを認識してもらうきっかけとなれば幸いです。
平成25年3月
国際教養大学地域環境研究センター
センター長 熊谷嘉隆

【サイトリニューアルの際の追記】本アーカイブスは2013年に公開されてから全国的に高い評価を受けてきました。今回、英語と中国語(簡体字および繁体字)の解説を加え、多言語サイトとしてリニューアルすることとしました。秋田の素晴らしい文化遺産を世界の人々と共有することができれば幸いです。
2021年3月
国際教養大学アジア地域研究連携機構
機構長 豊田哲也

監修のことば
秋田には先祖代々伝えられてきた民俗芸能がたくさんあります。私もその多様性と奥深さに魅了されてきた一人で、長年、故郷秋田を中心に民俗芸能の調査研究に携わってきました。地方の集落や神社などに調査に入る度に様々な発見があり、興味は尽きません。その一方で、近年気がかりなのが、各地の民俗芸能の変容と衰退です。昔は、民俗芸能は人々の生活や信仰の中に深く根差し、四季の移り変わりと同じような自然な営みとして行われてきました。しかし、生活様式の近代化に伴って民俗芸能は人々の生活から徐々に離れ、本来の意味が薄れて単なるイベントと化してきているのが見受けられます。
秋田県教育委員会が平成5年に発行した「秋田県の民俗芸能~秋田県民俗芸能緊急調査報告書~」における調査には私も調査委員の一人として参加いたしましたが、民俗芸能の衰退はすでに当時から深刻な状況でした。そして、20年後の今日、その衰退傾向に歯止めはかかっておらず、有効な対策が打ててこなかったことに益々危機感を覚えておりました。
かねての問題が、国際教養大学地域環境研究センターの研究主題のひとつに取り上げられることとなったのは誠に幸いでありました。これまでの聞取りと記述を中心とした調査とは一線を画し、一般の人がより触れやすい映像媒体を使って民俗芸能の「ありのままの姿」を記録として残し、それをDVDとインターネットを使って広く公開するという趣旨にひとつの可能性を見出し、この事業に携わった次第であります。
映像撮影を中心とした調査は、従来の聞取り中心の調査とは異なり様々な課題にぶつかり試行錯誤の繰り返しでした。映像の質や調査対象など、欲を言えば改善点はいくらでもあります。しかし、これまでほとんど一般的に認知されてこなかった各地域で古来より伝承されてきた民俗芸能を、300件以上も収録し、誰でも触れやすい映像媒体で一般に公開できたことは、秋田の民俗芸能においても画期的な事だと思っております。
本調査を通して、休止または消滅したと考えられる民俗芸能は平成5年の悉皆調査からさらに増加していることが明らかになりましたし、変容も各所で見られました。本事業は、これらの衰退に対して直接改善策を提示するものではありませんが、本事業を通して作成したDVDやインターネット上に掲載した情報が、民俗芸能の理解促進と保存・継承の一助となることを切に願います。終わりに、本事業に御指導・御協力を頂きました各保存団体の方々や市町村教育委員会の方々、本事業を実現させた国際教養大学、調査研究で労を共にした調査員並びにスタッフ諸氏に厚く御礼を申し上げます。
平成25年3月
秋田県民俗学会
副会長 齊藤壽胤

事業概要
補助金:
文化庁地域伝統文化総合活性化事業[平成22年度]および文化庁文化芸術振興費補助金(文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業)[平成23・24年度]
実施主体:
公立大学法人国際教養大学 地域環境研究センター
監修:
齊藤壽胤(秋田県民俗学会副会長)
プロジェクトチーム:
山谷貴子、橋本芽衣、安達裕美子、伊藤綾、吉田清香
調査年度:
平成22年度[秋田市、由利本荘市、羽後町、にかほ市]、平成23年度[鹿角市、藤里町、三種町、能代市、八峰町、上小阿仁村、北秋田市、小坂町、大館市、男鹿市、大潟村]及び平成24年度[五城目町、潟上市、井川町、八郎潟町、大仙市、仙北市、美郷町、湯沢市、横手市、東成瀬村]
対象芸能:
本調査の対象とした芸能は、平成5年3月30日に秋田県教育委員会が発行した「秋田県の民俗芸能-秋田県文化財調査報告書第二二七号-」に掲載されている芸能を主として、1)民間で継承されている芸能、2)歌舞音曲に関する芸能 、3)江戸末期以前から始まったと推測される芸能、4)その他、該当するかどうか曖昧な芸能やこれらの基準に準ずる価値が認められた芸能について、本事業で監修を務めた齊藤壽胤(秋田県民俗学会)が該当していると判断した芸能を対象に調査を行いました。
なお、本事業において対象となる芸能の中で、1)教育委員会が休止中と定めている芸能、2)平成22~24年度の間で披露されなかった芸能、3)平成24年度対象地区に関しては当該年度に披露されなかった芸能 、4)保存会から休止中であるとの報告があった芸能に関しては、便宜上「休止中」とみなし、保存会に連絡が取れず、関係者の連絡先も分からない芸能に関しては「消滅」とみなしました。
また、休止または消滅とみなした芸能の中で町指定無形民俗文化財、市指定無形民俗文化財、県指定無形民俗文化財、国指定重要無形民俗文化財のいずれかの指定を受けている芸能、または国指定重要無形民俗文化財に指定されている行事の一環で披露される芸能に関しては、可能な限り既存の資料を保存会や教育委員会等から許可を得て借用して映像または写真にて掲載しております。
調査方法:
調査時点で活動中の芸能に関しては、現地において撮影することを最優先とし、その際に本サイトに掲載する内容の聞取り調査も行いました。なお、活動中の芸能においても当日天候等の理由により中止になった芸能は、可能な限り既存の資料を借用して映像または写真にて掲載しております。また、休止または消滅している芸能に関しましても可能な限り聞取り調査を行い、情報を本サイトにおいて公開しております。
結果の公表:
3ヵ年間の事業を通して撮影した秋田県内の民俗芸能の映像データは、それぞれDVDとして各芸能保存会、各市町村の教育委員会、図書館及び小中学校に無償で配布しました。DVDの貸し出しに関しては「DVDの貸し出し」のページ をご覧ください。 また、映像データからは2分間にまとめたダイジェスト版も作成し、聞取り調査から得られた開催日、開催場所及び解説文等と合わせて本サイトに掲載しております。各芸能並びに芸能カテゴリーの解説文は、本事業で監修を務めた齊藤壽胤(秋田県民俗学会)が作成しました。

総合報告書:
本事業の主な成果は、300件を超える民俗芸能の撮影・聞取り調査結果を編集したDVDとWEBサイト「秋田民俗芸能アーカイブス」ですが、 それらでは表現しきれなかった事業の実施方法等の詳細については、3ヵ年間の事業を総括・整理して総合報告書を作成しました。 総合報告書は御協力頂いた市町村教育委員会及び調査協力者等に配布するとともに、本サイト(以下)からも PDFをダウンロードできるようにしました。
秋田県内における民俗芸能の調査研究事業総合報告書
編集・発行者: 公立大学法人 国際教養大学 地域環境研究センター
印刷・発行日: 平成25年3月

謝辞
本事業は、秋田県における多くの民俗芸能関係者の方々による多大な御協力により実現することができました。この場をお借りして御礼申し上げます。
・秋田県及び各市町村教育委員会
・御協力頂いた民俗芸能保存会については、各芸能のページをご覧ください。
・調査協力者各位(五十音順):天野荘平氏、天野大弐氏、大穂耕一郎氏、木嶋竹夫氏、工藤孝征氏、佐々木広人氏、須田幸樹氏、関谷悟氏、真坂隆昌氏、松原明生氏、松原アメル氏、三浦敏男氏、和田捷治氏、渡部昇氏
・横浜電子工業株式会社(平成22・24年度秋田民俗芸能アーカイブス構築業務委託業者)
・株式会社プロデュース・プロ(平成23年度秋田民俗芸能アーカイブス構築業務委託業者)
・阿仁ラジオ店(平成23年度撮影業務委託)
・株式会社ワールドプラン社(平成23年度撮影業務委託)
・秋田市民俗芸能伝承館
・一般財団法人 たざわこ芸術村 民族芸術研究所